音楽室の肖像画の目が動くとき、一番流し目がセクシーなのは誰か




 

小学校の音楽室には、歴史的に名高い音楽家たちの肖像画が飾られている。

これら肖像画に描かれた人名を知るだけでも、世界の深遠なる音楽文化に触れるきっかけとなる。小学生にとっては素晴らしい教育機会だ。

 

ただ、肖像画というものは、小学生が愛着を持つにはちょっと描き込みが多すぎる。

例えば夜の音楽室では、肖像画の顔だけが薄暗く浮かび上がるのだ。そんな不気味な迫力もあいまって、いつからか肖像画にまつわる怪談が口承されるようになった。

 

 

こうした噂は次第に学校の七不思議のように定着し、多くの児童に肖像画に対する恐怖心を植えつけた。

しかし、この恐怖心によって子供たちが音楽芸術を学ぶことから遠ざかっているのなら、それは由々しき事態である。ただちに状況を改善しなければならない。

 

 

もう仮に目が動くとして、せっかく目が動くなら、その流し目のセクシーさに注目してみてはどうだろうか。

誰もが知っている肖像画のビッグタレントたちが、とある夜に、あなただけを見つめるのだ。その艶っぽい視線の動きに、ついついドキッとときめいてしまっても然るべきだろう。

 

そう。このときめきこそが、恐怖心以外で肖像画と向き合える方法なのではないか。

 

そして、彼らの瞳がこちらを見つめた時、我々は誰の流し目に一番ときめくのだろうか。

今回はこの流し目選手権を通じて音楽室や肖像画への苦手意識を廃し、より多くの児童たちが音楽芸術に触れて、心豊かに育てる未来を描きたい。

 

 

調査開始

まずは調査対象として、小学校の音楽室に飾られている肖像画のうち最も定番の音楽家たちを選定させていただいた。

今回の流し目選手権にエントリーするのは、次の10名である。

 


 

いずれも錚々たる顔ぶれであり、一度は名前を聞いた音楽家ばかりだ。そんな彼らが今宵、視線の色っぽさで火花を散らす。

 

今回はMacの「Keynote」に備わっているアニメーション機能を利用して、音楽家たちの瞳の部分だけを動かし、時代を超えて彼らの流し目を再現する。

本記事ではGIF画像にして紹介しているので、みなさまにもぜひ彼らの流し目を味わっていただこう。

 

 

流し目選手権・開始

まず一人目はお馴染み、モーツァルトの登場だ。

 

『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』などを作曲したドイツの作曲家である。

本名はヨハンネス・クリュソストムス・ウォルフガングス・テオフィルス・モザルトと非常にうるさい。

 

そんな彼は古典派音楽を代表する一人であり、西洋音楽に大きな影響を与えた偉大な音楽家である。

音楽室の肖像画としてもスタメン中のスタメン、AKBで言えば前田敦子のような絶対的センターだ。

 

今回の彼の肖像画は子供の姿で描かれたものであるが、幼き頃のモーツァルトの流し目はいかほどのものか。

 

それがこちらである。

 

 

トクンっ。

 

少しの照れの混じる視線。恐る恐る瞳を動かした彼の目配せは、天才作曲家とはまた違う、一人の純朴な少年の姿を映し出した。

「君のことを、好きになってもいいのかな。」そんな声が聞こえてくるようだ。決して器用なわけじゃないが、等身大の彼の想いをフライングゲットというわけである。

 

続いてはベートーヴェンを見てみよう。

 

本名、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン。

かの有名な『エリーゼのために』『運命』などを作曲したドイツの作曲家だ。

 

モーツァルトと同じく古典派音楽の代表的存在であり、音楽史上もっとも重要な作曲家の1人として数えられている。

音楽室の肖像画としてはこちらもスタメン中のスタメン。モーツァルト全盛期の後に時代を築いたことを鑑みると、AKBで言えば指原莉乃といったところ。

 

そんなベートーヴェンの目が動き、流し目をおこなうとどうなるのだろう。

それがこちらである。

 

 

作曲の手を止めてまで、わたしに向ける熱視線。

 

こんな眼を向けられたら、曲を聞かずとも『運命』を感じてしまう。

稀代の音楽家との恋路は波乱の予感だが、恋するフォーチュンクッキーは、そんな悪くない未来を示してくれるヨカンもしているのだ。

 

続いて、バッハはどうだろう。

 

バロック音楽を代表する音楽家で、「音楽の父」と称されるドイツの作曲家だ。

卒業式の定番とも言える『G線上のアリア』の作曲者であるが、

 

そんなバッハの流し目がこちらである。

 

 

ひたすら圧を感じる。

 

どうやらバッハではときめきよりざわめきが勝つようだ。AKBで言えば秋元先生の風貌に近く、プロデューサー然とした重鎮感を放ってしまった。

「課題、やってきてないんですか?」そんな声が聞こえてくる、嫌な種類の流し目に出会ってしまった。

 

白黒の肖像画でもやってみよう。

 

ブラームスはドイツ・ハンブルク出身の作曲家であり、バッハ、ベートーヴェンと共に「ドイツ音楽の三大B」と称される偉大な人物だ。

そんな彼の流し目がこちらである。

 

「あれ俺さっきの店で、財布出したっけ…」

 

とでも言っているかのような、眉間にしわを寄せた困惑の表情だ。

そんな目で見られても知らないよと返したくなる顔であり、ブラームスはときめきとは程遠い仕上がりとなった。

 

 

というわけで、いくつかの事例を紹介させていただいたが、

ここからは流れ目が実にセクシーだった肖像画のベスト5を発表していこう。

 

まずは第5位だ。

 

 

第5位 ヘンデル

ドイツ生まれでイギリス人の作曲家であり、代表曲に『メサイヤ』『調子の良い鍛冶屋』などがある。

 

音楽の父」であるバッハと同時期に活躍したヘンデルは、「音楽の母」と称されている。

髪型含めバッハと若干のキャラ被りが否めないが、流し目に関してはいかほどか。

 

ヘンデルの流し目がこちらである。

 

 

どこか安心感がある。

 

先ほどのバッハとは対称的に「大丈夫かね?」と身を案じてくれているような印象を受ける。

どっしりと構えながら、しっかりと見守ってくれる。よき父親のような視線に好感を抱いた女性も多いのではないだろうか。

 

「音楽の母」という呼称が伊達じゃないくらいに包容力の違いを見せつけたヘンデルが、まずは第5位を獲得した。

 

 

第4位 メンデルスゾーン

ドイツ・ロマン派の作曲家である。6歳より母親にピアノの手ほどきを受け、モーツァルト同様に「神童」と呼ばれて育った。

彼の作曲した『結婚行進曲』は、結婚式で新郎新婦の入場時に流れる定番曲であり、誰もが一度は耳にしたことがあるだろう。

 

また彼は肖像画の通り、かなりの美男子だったそうだ。

そんなメンデルスゾーンの流し目が、こちらだ。

 

 

これは遊んでる男だ。

 

ひとしきり二人の会話が盛り上がった後の一瞬の静寂。なんとなくお互い良いなと思っている空気の中で、目と目が合う。

彼の手が、あなたの手にそっと触れる。そして軽く微笑むような表情で、この流し目である。

 

そこからは彼のメンデルス領域(ゾーン)。ついついその身を任せてしまう女性も多いのではないか。

「俺の代表曲(結婚行進曲)一緒に使おうよ」なんて囁かれてしまっては骨抜きである。なんともニクイ男だ。

 

 

第3位 ハイドン

彼もまた古典派音楽を代表する作曲家であり、「交響曲の父」「弦楽四重奏曲の父」と称されている。

あまりの名声の高さに、別の人物が作った曲がハイドンの名前で出版されたことがあるほど、作曲家としては偉大だったようだ。

 

そんなハイドンの流し目がこちらである。

 

 

イケオジというやつである。

 

流し目としてはトップクラスに綺麗な仕上がりだ。年長者の余裕のようなものが感じられる。一緒に旅行に行きたいタイプのおじさまである。

溢れ出るダンディズムを武器に、ハイドンがベスト3に食い込んだ。

 

 

第2位 チャイコフスキー

ロシアの作曲家で、バレエ音楽で有名な『くるみ割り人形』『眠れる森の美女』などを作曲した人物である。

「リズムの天才」と称され、メルヘンチックかつロマンチックな曲想も彼の音楽の特徴だ。

 

そんなチャイコフスキーの流し目がこちらである。

 

 

鋭い眼光がたまらない。

 

「今夜、お前を抱くぞ」

熱い視線を向けられてそう言われたならば、「はいコフスキー…///」と言う以外他ないのではないか。

 

こんな肉食で雄々しい表情を見せながら、メルヘンチックやロマンチックな楽曲を生み出すというギャップもたまらない。

先ほどのハイドンとは対称的に、内に眠るギラつきを見せたチャイコフスキーが第2位を獲得した。

 

というわけで、2位までの流し目をご覧いただいた。

続いて待望の第1位の発表だが、その前にここで最下位についても紹介しておこう。

 

 

最下位 ドビュッシー

フランスの作曲家で、代表曲に『月の光』『海』などがある。

また一説では、パリ音楽院在籍時に伝統を破壊しうる言動で教師らを困らせるなど荒い性格の持ち主だったそうだ。

 

そんなドビュッシーの、最下位に甘んじてしまった流し目がこちらである。

 

 

なんか雨降ってきたけどどうする?

 

そんなことをツレに聞くレベルの、なんとも頼りない視線の動きである。きっと傘も持ってきてないのだろう。

おそらく友人としては気のいいやつだが、セクシーという評価基準では今回最下位とさせていただいた。

 

それでは気を取り直して、いよいよ第1位の発表だ。

 

 

第1位 ショパン

今回第1位に輝いたのが、フランスの作曲家フレデリック・フランソワ・ショパンである。

代表曲に『子犬のワルツ』『革命のエチュード』などがあり、彼の作曲した曲は、誰もが一度はどこかで聞いたことがある有名な曲が多い。

 

7歳から作曲をしていたショパンは、ワルシャワ音楽院時代の通知表に「音楽の天才」と書かれた逸話もある。

 

そんなショパンの流し目がこちらである。

 

 

YES!セクシー!!

 

その端正な顔立ちを存分に生かしきって、100点の流し目を披露してくれたショパンさんである。

同じく甘いマスクを持つメンデルスゾーンとは違って品がある。遊んでる感ゼロなのが素晴らしい。

 

 

最早このように、二度見をさせてもかっこいいという具合である。

 

肖像画が動く時点で、二度見をしたいのはこちらではあるのだが。

 

総括

いかがだっただとうか。

これまで肖像画にある種の不気味さを感じてきた人たちも、彼らの意外な一面に魅せられ、今一度音楽室に足を運んでみたくなったのではないだろうか。

 

肖像画の目が動くという現象自体は、もう明らかに心霊的なそれなのだが、

1位のショパンをはじめ彼らの流し目を待つくらいの気概を持ってもらえると、これまた幸いである。

 

そして今まで以上に偉大な作曲家たちを深く理解し、改めて古典音楽芸術に触れる機会としていただきたい。

最後に、今回流し目を披露していただいた音楽家のみなさんに集合していただこう。

 

 

こんな音楽室は嫌だ。