心霊写真というものに出会ったことはあるだろうか。
撮った写真の一部に、いるはずのない何かが写り込む。
それはこの世を去った者の残留思念や、はたまた生きている者の強い念が像を結んだ結果であり、我々を恐怖に陥れるものだ。
そんな我々の精神衛生を脅かす心霊写真だが、もう少し可愛らしい仕上がりにはならないものだろうか。
霊に落ち着いて向き合うことで、彼ら彼女らの果たされなかった想いや願いを汲み取り、前に進むことができるかもしれない。
人間の変わり果てた姿に冷静に向き合おうというのも難しい話だが、一方で人間以外の動物の霊も多く存在するようだ。
ポケットモンスターならどうだろう。
ポケモンのようなファンシーな見た目であれば、仮に心霊写真になっても冷静に対処できそうだ。それは心霊というものに向き合う、第一歩となるのではないか。
そのためには、いかにポケモンの心霊写真とは言え、「このポケモンは怖い」や「このポケモンはそうでもない」というケースを事前に把握しておくと安心である。
今回はポケモンが心霊写真として写り込んだ場合に、どのポケモンなら怖く、どのポケモンなら平気なのかを調査することにした。
ファンタジーな表現で恐れを矮小化する。なんとも日本人らしい方法で、我々は果敢にも心霊写真に向き合って行きたい。
調査開始
今回は、ゲーム『ポケットモンスター 赤・緑』の時代からいる、初代151匹のポケモンたちを調査の対象とする。
ピカチュウやゼニガメなど、ポケモンに詳しくない人にとっても馴染みのある生物が多いはずだ。
また、写真のシチュエーションとしては心霊写真で最も多いパターンの一つ「被写体の肩に手が置かれている」という状況を再現する。
(※こちらは心霊写真ではなく、あくまで写真の一部を切り取ったものです。)
最もよくある例であり、恐怖感も担保された心霊現象だ。
それでは早速ポケモンの心霊写真を作ってみよう。
今回は様々なポケモンの情報を見ることができる『ポケモンずかん』さんよりポケモンの画像を拝借し、作業を進めていく。
原理的には全部ゴースかゴーストで良いだろうといったサボりをせずに、しっかりと全151匹分シミュレーションする。
まずはこちらだ。
お分かりいただけただろうか。
少年の左肩を掴む、不可思議な手が写り込んでいる。
これは、ドククラゲである。
しかしこうして見ると、服のシワかたるみにも見えてあまり恐怖感をそそらない。
ドククラゲの触手は、心霊写真で肩に忍び寄る手としては効果は今一つのようだ。
続いてはこちらだ。
お分かりいただけただろうか。
青年の右肩に、未練がましい手が写り込んでいる。
これは、スピアーである。
毒針を刺さずに乗せにくるという新しいスタイル。
スピアーの風体により、心霊写真としても尖った結果になってしまった
このように、151匹すべてのポケモンで心霊写真を作っていき調査をおこなった。
それでは今回はその中で、最も怖かったものと怖くなかったものベスト3を発表しようと思う。
怖い部門 第3位
まずは次の写真をご覧いただきたい。
一見夜の境内で踊りを楽しむ男女の写真であるが、中央にいる男性の左肩付近に注目してほしい。
お分かりいただけただろうか。
人間のそれよりも魍魎の類に近い、人ならざるものの右手がしっかりと写り込んでいる。
霊体は人間が楽しそうに集まる場所に引き寄せられるという。特にお盆どきには現世に渡ってくる魂も多く、“連れて行かれないよう”注意が必要である。
そしてこれは、
ゴーストである。
怖い部門 第3位:ゴースト
形・色もさることながら、肩に手を置いた際の違和感のなさが心霊現象としての恐怖感を引き出している。
まずはゴーストがベスト3に食い込み、本職の意地を見せた形となった。とは言えゴーストに関しては、ゴースト自体が既にそういうことなので、心霊写真かただのスナップショットなのか議論が分かれるところだろう。
今回は全151匹をフラットに評価したため、この順位とさせていただいた。
怖い部門 第2位
続いては次の写真をご覧いただきたい。
気球に乗って記念撮影。
夏を満喫する大学生の男女たちであるが、どこか違和感はないだろうか。そう、右の男性の肩に注目してほしい。
お分かりいただけただろうか。
不気味な白い手が彼の肩に忍び寄っている。3位のゴーストとは違い、霊体が人間の手に近づいており不気味さが一段と上がっている。
そう、これは
バリヤードである。
怖い部門 第2位:バリヤード
151匹のポケモンの中で、腕周辺が最も人間に近いバリヤードがランクイン。改めて全体の姿を見ても普通に気味が悪いので、食い込むべくして上位に食い込んだと言える。
怖い部門 第1位
次の写真をご覧いただきたい。
男性二人が会話をしている写真だ。
後方の男も肩に手をかけており非常にややこしい心霊写真になっているが、その異様な霊の存在に気づくだろう。
お分かりいただけたと思う。
ここまで霊体がはっきりと写ることは稀であり、その姿も幽霊よりは妖怪のそれに近いものになっている。
アンビリーバボーよりは、世界仰天ニュースの方で登場しそうな一枚だ。
そう、これは
ゴルダックである。
「怖い部門 第1位:ゴルダック」
人間の手にも近く、日本古来より恐れられてきた伝説の生き物・河童の恐怖感をも兼ね備えている。水死体のような肌の色も中々ポイントが高い。
以上が怖い部門のベスト3である。多少なり、心構えが掴めたのではないだろうか。
それでは続いて、全く怖くないワースト3も発表していく。
怖くない部門 第3位
次の写真をご覧いただきたい。
持ち物は置いた方がいい。
特に霊体がスプーンを握っていると、どうしても恐怖感より食いしん坊感が勝ってしまう。
そしてこれは、
フーディンである。
怖くない部門 第3位:フーディン
全貌を見て初めてユリゲラー的な用途のスプーンだと気がつくが、心霊になって手元にフォーカスされるとただの食器になってしまう。
進化前のユンゲラーも同様ではあるが、彼が片手なのに対しフーディンは両手でスプーンを持っている。食いしん坊レベルがもう一段高く、ワースト3にランクインした次第だ。
怖くない部門 第2位
次の写真をご覧いただきたい。
なんか知らんが外した方がいい。
こんなドラえもんみたいな手が乗っかっていたところで恐怖感はたかが知れている。そもそも心霊写真で握り拳なんて見たことがないのだ。
そしてこれは、
エビワラーである。
怖くない部門 第2位: エビワラー
そもそもボクシンググローブというものが心霊と相容れないのだ。霊体となり、姿形を無くした存在が不気味であるのに、物理でやり合う気満々のポーズを見せてしまうのはご法度だろう。
怖くない部門 第1位
次の写真をご覧いただきたい。
ワッペンになった。
心霊写真ということが伝わらない。ただその一点のみである。
こいつはコイルだ。
怖くない部門 第1位: コイル
真ん中だけなら目玉のおやじのような妖怪らしさを持っているのに、心霊写真になるとまったく恐怖を発揮できなかった。
ということで初代151匹のなかで、怖い心霊写真・怖くない心霊写真をまとめてみた。前段で述べた通り、心霊写真と冷静に向き合う一つのきっかけとなってくれれば幸いである。
また、今回多くのポケモンの心霊写真を作成するというおそらく今後二度とない機会に恵まれた。
そのため特別に151匹から拡張し、現存する全893匹のなかで、一番良い心霊写真と一番嫌な心霊写真についてもここに記しておこう。
一番良い心霊写真
次の写真をご覧いただきたい。
最高の心霊写真だ。
なんだったら胸ポケットから出てきて欲しい。他のやつも、スプーンをニョキッと出す暇があったら、このくらい粋なことをしてくれても良いのではないだろうか。
このポケモンは、ロゼリアと言う。
なるほど、表情も粋である。薔薇の色を見れば、どちらの手を出したのかもしっかり分かるのが素晴らしい。
一番悪い心霊写真
次の写真をご覧いただきたい。
怖さより「嫌」が勝つ。
心霊に憑かれるとよく「肩が重い」と表現することがあるが、実際に重しを持たれるのは論外だろう。
このポケモンは、ローブシンと言う。
タフそうなポケモンなので、あまり心霊化しないことを願う。
総括
いかがだっただろうか。
昨今ではテレビ番組でも、心霊写真を取り上げる機会が少なくなってきた。
その背景には趣向の変化や、単なるクレームによる要因もあるだろう。一方で、技術の進歩とともに分からないことがたくさん分かるようになり、心霊の出どころも少なくなっているのではないだろうか。
自分を見失わない程度にではあるが、この世ならぬものに思いを馳せることは、大切な意味を持つことがあるはずだ。
あなたがもし、この先心霊写真に遭遇した際には、今日の写真の数々を思い出して欲しい。
あなたの心霊は、スプーンを持っていませんか?
完