国民的人気漫画『ドラえもん』において、主人公・ドラえもんが取り扱う「ひみつ道具」の種類は、実に2000以上あると言われている。
これらのひみつ道具は、ドラえもんの製造時から既に備えられているスターターパック的なものもあれば、ドラえもんが未来のデパートで追加で購入もしくはレンタルするものもあるという。
これらの道具は、ドラえもんの腹部の「四次元ポケット」に収納されており、このポケットの内側は四次元空間と繋がっていて無限の収納スペースが存在する。
氏の道具をゴソゴソと探すさまなどを見るに、基本的にはだだっ広い空間から配置された道具を探しだす作業をしているのだろう。
ということは、よく使う道具や、氏が愛用する道具ほどポケットの手前に集まるし、逆に使用頻度の少ない道具は奥に溜まることになる。
そう、必然的に、
手前にある = 愛用している。
という式が成り立つのである。
そうすると、氏が愛用する道具とはどのようなものなのか。気になるところだが、我々はドラえもんのポケットの中を見ることはできないし、作品の中でそのような情報が発信されたことはない。
思い出してみていただきたい。
ドラえもんのポケットの中の階層が垣間見える瞬間がないだろうか?そう、
ドラえもんがワタワタしている時である。
作中でドラえもんたちがピンチの時、氏は慌てふためきポケットの中をかき回す。
「あれでもないこれでもない…!!」という氏のセリフと、それをさらに周囲が急かす光景は、誰もが一度は見たことがあるだろう。
そこで氏は関係ない道具を次々に放り投げていく。先ほどの考えにのっとると、放り投げられる道具はドラえもんのポケットの手前に置いてあるものである。
つまり氏がワタワタしている時に外に放り投げられる道具を見つめると、氏が普段愛用している道具が見えてくるはずだ。
ということで今回は、作品中のあらゆる「ドラえもんがワタワタしている状態」を見つけ出し、その時どんな道具がポケットから飛び出しているのかを調査する運びとなった。
調査開始
今回は漫画『ドラえもん』全45巻と、『大長編 ドラえもん』全24巻より、ひたすら「ドラえもんがワタワタしている瞬間」を探し出して、どんな道具がポケットから放出されているかを集計していく。
そして調査を進めていく上で我々はある一つの事実に気づく。
大長編でない通常のコミックの方には、ドラえもんがワタワタする瞬間がほとんどないのである。
通常コミックでは一話ごとに扱われる道具が一つ決まっており、その道具を軸として話が進むので、その中で他の道具を必要とするシーンがあまりないのだ。
結局全45巻をチェックし終え、意外にも通常コミックの中でワタワタしている瞬間は 40巻における1箇所だけであった。氏は、一問一答のようなタイプの課題であれば解決能力は非常に高いのだろう。
それとは対照的に、『大長編 ドラえもん』ではひみつ道具ではなく物語に焦点が当てられているため、多種多様なひみつ道具が登場する。
さらに「地球の危機」や「仲間の命の危険」など普段の単行本では陥ることのない危機に瀕することが多いため、氏がパニック状態になる頻度も多くなる。
結果的に、『大長編 ドラえもん』では 9作品・16箇所 で「ドラえもんがワタワタしている瞬間」が確認できた。これは氏の応用問題に対する対応力の弱さの現れと推察する。
通常コミックで諸課題を解決した経験を元に、大長編にてより大きな課題に対処するのが理想的な流れだが、氏はまだそのフェーズではないようだ。
受験におけるセンター試験には強く、二次試験には弱いタイプである。ここから過去問を何周かして、対応力を高めていってほしい。
それでは通常コミック、大長編の全ての調査結果を元に導き出したランキングを発表していこう。
第5位
ドラえもんがワタワタした時に出てくるひみつ道具ランキング第5位は、
「タイムふろしき」であった。
言わずも知れた、超便利アイテムである。
被せた物の周囲の時の流れを進めたり戻したりできる道具であり、特に『大長編 ドラえもん』においては見ないことがないほど頻出している。
今回「ドラえもんがワタワタしている時」にポケットから出てきた道具のカウントとしては、大長編の『のび太の宇宙開拓史』の1回のみであったが、ドラえもんが普段からこの道具を重要視していることはわかる。
ちなみに同率5位としては、
コーヒーカップ、歯磨き粉、スリッパ、湯呑み、羽子板
など、ひみつ道具以外のものもあった。
ワタワタしている時にポケットから出てくるのは「ひみつ道具」とは限らない。彼にも暮らしがある。このような日用品の一つや二つが出てきてもおかしくはないのだ。
歯磨き粉を常備しているなんて、中々エチケットを踏まえているではないか。氏には猫のガールフレンドがいるという。向こうにお泊まりする日もあるのだろう。
結局同率5位としては以下のものもあった。
置き時計(デジタル)、コップ、しゃもじ、バケツ、長靴、タコ、羽根、帽子、飴玉、チョコレート、ハンマー、電球、鍋、漫画、おたま、筆、どら焼き、串団子、えんぴつ、インク、缶詰、けん玉、だるま
それでは続いて第4位を見てみよう。タイムふろしきのような有名どころはあるのだろうか…
第4位
ドラえもんがワタワタした時に出てくるひみつ道具ランキング第4位は、
ポット、雑巾、ナイフ、コマ、トイレットペーパー
ここに来て、ひみつ道具は一つもなかった。各回数は「2回」だった。
雑巾やトイレットペーパーなど、5位と比べて日常での利用頻度が上がってきた感触がある。
サッとナイフが出てくる手癖には若干肝が冷えるものの、氏も潜り抜けた修羅場の数が違うのだと見受けられる。
この時点でひみつ道具はランクインしなくなった。ここからは単純に道具ランキングとして進めていく。
第3位
ドラえもんがワタワタした時に出てくるひみつ道具、改め道具ランキング第3位は、
フォーク、どんぶり、やかん
登場回数は「3回」だった。
相変わらずまるでひみつじゃない道具ばかり出てきている。利用頻度で考えると、実印や保険証が出てきてもいい頃合いだが、特に炊事周りの持ち物が目立ってきた。
野比家の一員として居を構えていることを踏まえれば、食器などを携帯する必要はないはずだが……
しかし、これ以上の食器レパートリーもないだろう。ついつい要らぬ勘ぐりをしてしまうことに反省しつつ、第2位の結果へと進もう。
第2位
箸、皿、下駄、野球ボール、ペロペロキャンディ
登場回数は「4回」であった。
野比家で氏の食器は用意されないのか。
そんな疑問がつい口をついてしまう。いやはや、彼はああ見えて流浪のタイプで、裸の大将的な放浪をしているのかもしれない。裸であることと、そのシルエットに共通点がある。
これは不毛な心配だろう。ふと他を見れば、野球ボールやキャンディなど、のび太が喜びそうなものも登場している。これは微笑ましい。
きっと1位はバットやグローブが出てくるのだろう。のび太との友情や、等身大の姿で彼らと遊ぶ氏の情景が浮かんでくるのではないか。
そんな情感を期待して、第1位の結果へと進もう。
第1位
茶碗、イカ
登場回数は「5回」であった。そう、あの
茶碗
イカ
である。イカは、ゲソ部分や調理済みのカットされたイカではなく、等身大のイカが確かに「5回」描写されていた。
これはどういうことか。氏は野比家の食卓において、自前の茶碗で飯をよそって、イカ飯を食べているのか。いや、イカ飯は仕込みの段階からイカを使わないといけないから、仕込みの段階から氏が台所に立っているのか。
そもそも雑多に放り込まれたひみつ道具の中に、イカを結構な頻度で紛れ込ませておいて、イカ臭くならないのか。
「ドラちゃん。最近ポッケから出す道具、イカ臭いわよね」などとしずかちゃんにでも言われたら、どう答えるのだろうか。それはそれで、良いのだろうか。
また、しれっと茶碗も登場している。これで茶碗・箸・皿がワンツーフィニッシュを飾った。氏のポケットの状態は、とにかくすぐ飯を食うことに秀でている。
等身大の姿でのび太と遊ぶ姿ではなく、等身大のイカで飯を食う氏の姿が、そこにはあった。
総括
今回はドラえもんのパーソナルな部分に迫るレポートをお送りした。
氏の嗜好品としてイカの名前が挙がることは作中でも滅多にないため、意外な調査結果だ。ひみつ道具ではなくただの食器が多い事実も、非常に予想外であった。
さて、今回の調査に含めなかったのはアニメでのワタワタである。
2020年8月現在でも、地上波アニメや映画にてドラえもんの新作が放送されている。その際にはどこかで、道具を探すためにワタワタする最新のシーンがあるはずだ。
その際にはぜひ今回の調査結果を思い出して、ポケットから繰り出される道具に注目してみてほしい。長い年月を経て令和の時代、氏の愛用道具はどう変化したのか。我々もウォッチしていきたい。
次こそは、AirPodsとかが出てくるのかもしれない。
完