暮れなずむ町の川沿いを金八先生の格好で歩いたら何人に「先生!」と声をかけられるか




 

フォークグループ『海援隊』のリーダーでありながら俳優でもある武田鉄矢。

彼が主演を務める『3年B組金八先生』シリーズは、開始した1979年から約30年にもわたって放送された人気テレビドラマである。

 

荒川の河川敷で氏が「3年B組〜!!」と叫んだのち、「金八先生〜〜!!」と生徒が駆け寄ってくるオープニングは誰もが一度は目にしたことがあるだろう。

 

ドラマの内容は、武田鉄矢演じる熱血教師・坂本金八が、担任を受け持つ「3年B組」で教鞭を執るストーリーであり、

ときに暴力・犯罪・覚せい剤などリアルな教育現場の問題も題材とされた。

 

作中の様々な問題に対して体当たりで立ち向かう金八は、結果としてクラスの生徒たちに大いに慕われることになる。

放送終了後の2019年におこなわれた「理想の教師が出てくるドラマ人気ランキング」では金八先生が2位を獲得するなど、作品という枠を飛び超えて教師としての存在感を獲得している。

 

 

やはり金八先生と全く同じ格好をして河川敷を歩けば、

金八先生がいると気づいた人から「先生!」と声をかけられるのだろうか。

 

ドラマが放送終了して10年が経過したが、金八先生の人気と知名度は今もなお健在のはずだ。

ということで今回は、ドラマ『3年B組金八先生』の坂本金八の格好で河川敷を歩いたとき、すれ違う人から「先生!」と声をかけられる回数は何回なのかを調査する運びとなった。

 

 

調査方法

今回は次の人物に調査に参加してもらう。

 

ごどう…当サイトの企画スタッフ。金八シリーズはあまり見ておらず、ごくせん派。「同じくロングヘアーをかき上げる教師なので…」と説明して参加の承諾を得た。今回は金八先生として河川敷を歩く。

 

ぴろぴろ…当サイトの管理人。今回は金八であるごどうが「先生!」と話しかけられた回数をカウントする。

 

そして今回の調査は都内某所。作中の舞台である荒川の河川敷によく似たこちらの河川敷を利用する。

 

 

実際に仕事終わりの教員が帰路についていてもおかしくない、町が暮れなずむ時間帯に調査を行う。

金八先生の主題歌『贈る言葉』の歌詞としても有名なフレーズ、暮れなずむ町。このような些細な要素もしっかりとシンクロさせ、徹底的に金八を匂わせにいく。

 

そして今回ごどうには、金八先生の格好をしてこちらの一本道を真っ直ぐに進んでもらう。

 

ちょうど近くに小学校もあり、実際の金八の歩行距離を十分にカバーする長さである。

「先生!」と話しかけられる算段は、確かにあるわけだ。

 

それでは早速、町が暮れきってしまう前に調査を開始しよう。

 

 

調査開始

ごどうが金八先生の格好に着替え、準備が整った。

武田鉄矢の身長は165cmだが、ごどうも170cmとそれほど離れていない。ドラマ放送から月日も経っているので、金八先生と認識される資質は十分あるだろう。

 

顔はお巡りさん寄りではあるが彼の持つ柔和な雰囲気でなんとなく金八らしさを醸し出している。

 

ごどう
この格好で夕方の河川敷はまずいよ。とんでもないリストラ感が出てるよ。

ぴろぴろ
大丈夫ですごどうさん、金八先生です。

百歩譲っても金八先生のリストラです。

ごどう
なおさら声かけづらいよ。

 

ごどうがスタート位置についた。

 

偶然にもスタート位置の真横には小学校が。ここを歩いていると、まるでこの学校から帰宅している教員のようだ。

ごどうもしっかりと、学年主任くらいの貫禄の笑顔を出せている。

 

ごどう
いい?歩くよ?この顔疲れるな。。

ぴろぴろ
朗らかなんで、金八先生は。ではお願いします!

 

金八先生、スタート。

 

勢いよくスタートしたごどう。早速何人かの老若男女とすれ違うが、まだ「先生!とは話しかけられない。

 

この時間帯の河川敷は部活中の学生やウォーキング、ランニングをしている大人が多い。

ごどうはそのまま歩みを進める。

 

スタート地点から100mほど進んだが、まだ「先生!」と話しかけてきた人数は0である。

町を見守るこの朗らかな笑顔も、こうも誰にも話しかけられないと一転して不気味さを放ち出す。

 

スタートから200mほどを過ぎても、未だに「先生!」と話しかけてくる人は0である。

 

スタートから300mを過ぎても、話しかけられる気配が全くない。我々の計算が狂い始めると同時に、ごどうの足取りも重くなる。

 

このままでは金八先生が河川敷を歩いているというより、30手前の男が終始ニヤニヤして歩いているだけになってしまう。

 

ゴールが近づいてきた。このままではまずいので少しゆっくり歩いてみたりするものの、

 

良いとこチラ見とてもじゃないが話しかけられる気配はない。

そしてなんと言うか、歩みがゆっくりになると一層気味の悪さが際立ってくる。

 

こうして、

 

ごどうが、歩き終わった。

 

ぴろぴろ
お疲れ様でした。いやぁ、、もう少しってとこでしたね。

ごどう
こんなんに気遣い要らねえよ。ゼロだよゼロ。声かけるそぶりすらねえよ。

 

ごどう
もう普通にヤバいやつを見る目で見られたよ。こんなのどかな場所で、あんな目線食らうと思わなかった。

ぴろぴろ
それは辛いですね。敗因はどのようにお考えですか?

 

ごどう
変な目線もなくただ無視されたのも多かったから、単純にまだ金八だと気づかれてないんじゃないかな

いや金八じゃないんだけどね。金八をやろうとしてることすら、と言うか。

ぴろぴろ
確かに、金八のクオリティは追求できる余地がありますね。

 

ぴろぴろ
わかりました。こういう時のために次の手は用意してあります。

ごどう
まだあんの?

もう2、3回心折れたよ。

 

服装を金八先生に寄せて河川敷を歩いただけでは「先生!」とは話しかけれらなかった。

そこで我々は次の一手に出る。

 

 

髪型を初期の金八のロン毛に合わせる

我々は金八先生を構成する上で大きな要素を見落としていた。

 

そう、髪型である。

金八先生といえば初期シリーズのロン毛が印象的である。全体を通してみるとロン毛でない時期の方が長いが、それでもロン毛は金八のトレードマークだ。

 

ぴろぴろ
金八レベルが明らかに上がってます。これで絶対いけるはずです。

ごどう
金八レベルを凌駕する勢いで変質者レベルが上がってない?

 

 

それでは装いも新たに、

 

金八先生、スタート。

 

後ろ髪をたなびかせながら歩み始めるごどう。

図らずも暗雲立ち込める曇天が、なぜか今の彼にはよく似合ってしまう。

 

前方からやってくるランニング中の人々も、

 

ごどうに近づくにつれ、どこかスピードを上げているように感じる。

確かに、我々も冷静になって見ると、パーソナルスペースに入った瞬間何をしでかすか分からない人物に見えてくる。

 

笑顔は朗らかさを極めるのに、結果がついてこない。

 

髪を伸ばしたところで、先ほど同様よくてもチラ見である。二度見すらない状況だ。

 

そして…

 

ロン毛のごどうがゴールした。

 

ごどう
ね?もう無理だって。終わろう。

俺がこの顔をできているうちにさ。

ぴろぴろ
うーん。見た目は金八に寄せることができたと思うんですが。何が足りないんですかね。

ごどう
金八先生と、金八先生っぽい誰かじゃ、全然危険度が違うんだよ。分かる?

 

 

ぴろぴろ
もっとしっかり金八にならなきゃダメってことですね、わかりました。

次の手があります。

ごどう
いつまでやらせんだよこのバカチンが

 

 

「人」という漢字の解説をしながら歩く

もっと本質的な金八先生らしさを出すため、氏の代表的な講義を不躾ながらおこなわせていただく。

 

ごどう
流石にアホすぎるだろ。

ぴろぴろ
いえ。これでようやくみんな、金八先生であると確信できるはずです。

 

ごどうが金八先生としての装備を充実させればさせるほど、どんどんと天候が悪くなっていく。

凶兆のような空にもめげず、改めて柔和な笑顔に戻り、

 

金八先生、スタート。

 

黒板の効果は素晴らしく、先ほどのターンよりもすれ違う人々の温度が体感で2度上がったと、のちにごどうは語る。

 

教室内ならまだしも、道端で講義を始めんとする姿が一層怪しさを放ってしまっているようだ。

 

基本的に赤の他人に何かを教えたがるジジイというのは厄介な性質があり、すれ違う人々もそのような危険を察知しているのかもしれない。

 

「先生!」と呼ばせるのに最適な児童たちともすれ違うが

 

もはやその目は敬愛する教師へ向ける眼差しではなく、

電車で一人ブツブツと喋っているような大人に対する目線である。

 

振り返りや二度見は多く獲得するものの、肝心の「先生!」の声かけを得られないごどう。

 

人という字は、人と人とが支え合って出来ているが、

 

ごどうは、誰とも交わらず。ただ独り、凛として

 

450メートルを歩ききった。

 

ごどう
ふぅ……。

ぴろぴろ
惜しいところまで来ているのですが。。なかなか難しいですね。

ごどう
…何でだろうね。

何でだと思う?お前も考えてごらんよ。

 

ぴろぴろ
うーん、、そのチョークがタバコに見えてダメとか。

ごどう
そんなわけねえだろ。

クソきめえからだよ。俺がよ。

 

ぴろぴろ
わかりました。それでは次の手を用意してあるので、一旦戻りましょう。

ごどう
いっぱい手があるな。一気に出してくれねえかな、今日のお前の手を。

 

ごどう
もう…っんとに、勘弁してくれ。。

 

服装と髪型を近づけ、さらに金八の代名詞でもある「人という字の解説」を織り交ぜてもなお「先生!」と話しかけてくる人は現れない。

うなだれるごどうを前に、我々は次の一手に出た。

 

 

サクラの生徒を置いておく

我々は道ゆく人たちに「金八先生がいる」と思わせることはできても、「話しかけていいんだ」と思わせることはできていなかった。

そこで重要なのが、最初の一歩を切り開くサクラの存在だ。

 

生徒
あ、先生!!!

 

ごどう
おおっ!カズケン!

 

ごどう
気をつけて帰れよぉ!このバカチンがぁ!

 

このサクラの生徒に続いて、他の人も「先生!」と話しかけてきてくれる算段であったが、

 

その後、話しかけてくる人はいなかった。

 

ごどう
当たり前だろバカがよ。

 

 

「麻薬ダメ!ゼッタイ!」のタスキをかけて歩く

数ある金八先生シリーズの中でも、覚せい剤に手を出して逮捕された丸山シュウとのエピソードは象徴的だ。

このタスキをかけることによって、あの命の授業をおこなった金八先生だと認識させれば、話しかけられる可能性が上がるはずだ。

 

ごどう
だとしても、こうではなくない?

 

だがそんな思いも虚しく、一向に話しかけられないまま歩数だけが積もっていく。

 

半分を過ぎたところで、改めて我々も誤算に気づく。

丸山シュウとのエピソードのシーズンでは、金八はもうその髪型ではない。

 

結果として、ランニングなど運動に励む人たちに紛れて、

違った意味の運動に勤しむ人になってしまった。

 

「先生!」と話しかけた人は、またもや0人であった。

 

ごどう
さっきからずっとウロチョロしてるし、

やってる側だと思われたのでは?

 

 

腐ったミカンを持って歩く

金八先生といえば、3年B組の生徒を「腐ったミカンだ」と揶揄した教頭らと衝突する初期のエピソードも印象的である。

第二シーズンなので、時期的に長髪とも合致する。腐ったミカンを持っていれば、自然とあのときの金八が浮かんでくるはずだ。

 

ごどう
農協の人じゃん。

 

だが、依然として厳しい戦況は続く。

 

金八先生がどうこうの前に、素手でフルーツを持つおじさんに話しかけたくないという当然の心理が働く。

 

金八が河川敷を練り歩くごとに、どんどんと天気が悪くなる。

エピソードの再現に集中するあまり、事前に想定したオープニングのイメージともだいぶ乖離が出てきてしまった。

 

結果、ここまで人と行き違っても「先生!」と話しかけてきた人は0人であった。

 

ごどう
これに先生って声かけるやつの方が、おかしいよ。

 

金八の隣にスタッフロールを流す

オープニングの光景と乖離が大きくなっている現状を反省した我々は、改めて各シーズンの映像を何度も見返した。

そして本家オープニングの再現度を高めるため、

 

隣にスタッフロールを添えて歩いてみた。

 

ごどう
もはや金八になりたい狂人だろ。

 

ようやく駆け寄ってくる生徒たちをイメージできるようになってきた。

こうして歩を進め、20mほど歩いたそのときだった。

 

合計4時間かけて制作したスタッフロールに夕風が直撃し大破。

生徒が駆け寄るより先に、キャストが散り散りになってしまった。

 

 

努力もむなしく、状況は振り出しへと戻ってしまった。

 

ごどう
振り出しじゃなくてさ、

最初から1マスも進んでないんじゃないかな。

 

 

調査終了

ぴろぴろ
今回は残念ながら0人という結果となりました。振り返っていかがでしょうか。

 

ごどう
何往復もして足がパンパンです。

なんで俺はこの意味のわからないシャトルランをやらされたのでしょうか。

ぴろぴろ
本当にお疲れ様です。今回の調査において、印象的だったのはどのような場面でしょう。

 

ごどう
そりゃあスタッフロール大破でしょ。

自分の横で流れてるスタッフロールが大破した経験、ある?走馬灯にも出るんじゃないかな。

ぴろぴろ
貴重な経験になったようで何よりです。

今回の調査は決して無駄ではありません。何より金八先生の偉大さを身をもって知ることができたので。

 

ごどう
そういうことにしておくかあ。

ぴろぴろ
はい、ありがとうございました!

次回はヤンクミになって、不良の抗争を止められるかの検証をお願いしたいです!

 

ごどう
このバカチンが