結婚式の前撮りとして、あるいは式を行わずにドレスや和装を着て記念として残すウエディングフォトにおいて、
東京駅丸の内前広場がその撮影場所として選ばれることはもはや定番である。
2012年に、約5年間の復元工事を経て現れたその新駅舎は、夜になれば暖色にライトアップされ幻想的な空間と化す。
東京駅を通りかかったことがある人なら、一度は足を止めてその異質な風景に魅了されたことがあるだろう。
100年前当時のままの外観の駅舎と、背後の高層ビル群の融合が創り出すこの場所が、一生に一度の記念撮影に選ばれるのは不思議な話ではない。
ただ昨今においては、ウエディングフォトを撮っていない日を見ないくらい撮影場所としては定番となってしまった。
その人気ぶりたるや、あまりの待ち行列に丸の内前広場で撮影することを諦め、別の駅前でウエディングフォトを撮影するカップルも今後増えていくかもしれない。
しかし、東京駅のようなフォトジェニックな空間を、他の駅でも享受できる保証はないのである。
今回はそんな人たちのために、
逆にウエディングフォトには向かない駅を調査し紹介することで、注意喚起を行いたいと思う。
一生に一度のメモリアルフォト、降りる駅を1つ間違えたなんてことは許されないだろう。
ということで今回はウェディングフォトに向かない都内の駅ベスト5を調査していく運びとなった。
今回の調査が日本の未来を担うカップルたちの手助けとなれば光栄である。
調査開始
今回は東京都内のあらゆる路線の駅を事前に調査し、ウエディングフォトに向かなそうな駅をピックアップしていく。
その中でもより怪しそうな駅に目星をつけ、実際に現地を訪れウエディングフォトを撮影。本丸である東京駅前の様子との乖離を比較検証していく。
そして東京都内のウエディングフォトに向かない駅ベスト5の選出が終わったので、順に紹介していきたい。
それでは早速第5位からみていこう。
第5位 高田馬場駅
いきなり3次会あたりの面構えだ。
5位にランクインした高田馬場駅は、JR山手線の他、西武新宿線・東京メトロ東西線が通っており、アクセスという点では申し分ない。
ただ基本的には駅前で早稲田生が吐いているため、フォトジェニックなコンディションは芳しくない。
ポージングを工夫しても、心なしか東京駅前ほどの躍動感が出ない。
フレームに現れるのはロマンチックな一瞬ではなく、どちらかと言えば良くない酔い方をした男女である。
遠目に映るはドン・キホーテにビルのテナントの数々。
新婦のドレス持ち上げ係も、居酒屋の店主がつとめるハメになる。
後ろを通る西武新宿線から漂うのは、ぬぐいきれないローカル感。
丸ノ内線車両のハイソなファイヤーレッドとは違い、幸せな2人を所沢方面へといざなってくれる。
ただどうしても高田馬場駅でしか都合がつかなかった場合は、
なるべく新郎新婦寄りで、かつポートレートでの撮影で背景をうやむやにしてしまうことをお勧めする。
それでは次の駅へ行ってみよう。
第4位 小竹向原駅
まず駅が小さすぎる。
4位にランクインした東京メトロ副都心線・小竹向原駅は、交通の利便性と、住宅街としての閑静な空間が魅力だ。
しかし、駅が小さすぎる。基本的にメトロ一本で勝負している駅はウェディングフォトには不向きと言えよう。
反面、駅が小さすぎるがゆえに、快晴の青空がよく映えるスポットにはなっている。
もはや横に佇むセブンイレブンの方が、東京駅舎ばりの存在感を醸し出している。
そう思うと、どこか東京駅にも見えてくる。
結婚式と新居の内見を同日に済まそうとする新婚夫婦に思われるかもしれない。
それでも、澄んだ青空の広がる住み良い街ではある。結婚式後に二人で訪れるのが吉であろう。
第3位 鮫洲駅
免許更新のついで感がすごい。
3位に輝いた京浜急行電鉄本線・鮫洲駅は、鮫洲運転免許試験場の最寄駅。
東京都民からすれば、言わずと知れた「免許の更新のためだけに行く街」である。
せめて買った新車と一緒に撮ろうよ。と言いたくなるワンショットだ。
鮫洲という字面からどうしても匂ってきてしまう、免許の二文字。
鮫洲に行かなきゃいけない時点で、それは言わば「半日潰れる日」であり、あの日の億劫な記憶が呼び覚まされる。
そして鮫洲駅の標識すらない画角においては、一層何が何だか分からないことに。
鮫洲試験場から徒歩8分、
健やかなるときも、病めるときも、安全運転を誓う2人とでも言うのだろうか。
しかしくれぐれも、病めるときは無理な運転はしないように。
さあ、残すところはあと2つ。
第2位 鶯谷駅
どうあがいても、ラブホがある。
第2位に輝いた山手線・鶯谷駅は、都内でも指折りのラブホ・風俗街。
男性諸君であれば、山手線で通過するだけでも少し体温が上がる経験をしたことがあるだろう。
しかし、それゆえに、
どうあがいても、ラブホがある。
「大将、やってる?」と言わんばかりに、ひょっこりとラブホが覗き込む。
ヤッてるのはてめえだろと言いたい気持ちをグッと飲み込み、我々は画角を工夫するしかない。
たとえば、新郎新婦のハート型に組んだ手をアップにするなど。
とはいえ「鶯谷」という文字列が、このハートに別の意味を持たせてしまうのは否めない。
いっそのことラブホ街を疾走する勢いでウェディングフォトに挑戦してはどうだろうか。
別の男との間で揺れ動く花嫁を、すんでのところで奪い返した男として、エモい一枚になるかもしれない。
しかし疾走感がない場合、
式の当日にどこ行ってんねんの1枚になってしまうため、注意が必要だ。
さて、いよいよ次が第1位である。
一番ウェディングフォトに不向きな都内の駅は果たしてどこなのか。
第1位 整備場駅
すべて、間違えている。
見事第1位に輝いたのは、東京モノレール羽田空港線・整備場駅だ。
名前の通り、羽田空港の整備工場が点在している町である。
1日の平均乗降者数は1,800人程度で、空港もしくは海上保安庁などで勤務する方の利用がほとんどだろう。
あたりには基本的に人々の“暮らし”というものがなく、駅も朝夕以外は無人で営業している具合である。
羽田空港でのフォトウェディングは確かに人気なので、「羽田で撮りたい!」という新婦の希望にも叶えられるかとも思ったが、
ちょっとインフラ過ぎたようだ。
羽田で羽田でも、空港と違い大地にしっかりと足を踏み締めている場所だった。
しかし一方で、通行量もなくどこか寂れたこの駅は、荒廃した世界を思わせる空間でもある。
世界でたった2人だけ。
あなたとわたしだけが残ったこの世界で、2人きりの結婚式を挙げよう。
そんなストーリーでもう一度写真を見たとしたら、
ちょっとだけ、悪くないかもしれない。
総括
いかがだっただろうか。
いくら東京駅の丸の内前広場が予約待ちだったとしても、駅の選択を誤るとせっかくの記念写真が台無しになってしまうようだ。
一方で都内には風情あふれる駅がたくさんある。
今回ご紹介したように、あらゆる駅が視点を変えれば情緒的な一枚になる可能性を秘めているのだ。
未来の撮影スポットは、あなたの最寄駅かもしれない。
完