異国の都市でも光の柱を立てたら住めそうな気持ちになるのか




 

新聞紙をめくるとき、あるいは自宅のポストに溜まったチラシを整理するとき、次のような不動産の広告が目に入ることがあるだろう。

 

これは販売しているマンション情報を、周辺環境とともに航空写真でお洒落に紹介した図だ。

東京を象徴する数多のビルの隙間を、主要鉄道が青い閃光となって駆け抜けており、メインの販売物件の所在地からは白い光の柱が出現している。

 

これは不動産広告ではよく使われる手法だ。まだ未完成の物件について、光の柱で表すことで誇大広告を避ける意味合いがある。

さらに「日当たり」などが重要なファクターである物件選びにおいて、敷地が高々と光り輝くさまは買い手にポジティブな印象を与えるのかもしれない。

 

そしてこのような不動産広告には「東京の未来が始動する。」「住まいに永遠という価値を。」といったような、エモい一言も添えられており、これまた買い手の心をくすぐるのである。

 

いつしかこの手のマンション広告はあるあると化し、エモい一言も一部ではマンションポエムなどと呼ばれ、今日まで多くの人々に親しまれてきたのだ。

 

 

 

もし馴染みのない海外の都市でも、この光の柱を立てたら、

日本人はそこに住めそうな気持ちになってしまうのだろうか。

 

我々にとって非日常である異国の都市でも、広告でよく見る光の柱をぶっ刺してしまえば、途端に日常的なシーンに移り変わるのではないだろうか。

ということで今回は、普通ならば住めっこない異国の都市に、不動産広告でおなじみの光の柱を立てることで住めそうな気持ちになれるのかどうかを検証することとなった。

 

人生で一度は訪れたいあの国やあの街に、居を構えることができるなら。今回はそんな夢のような気分を追い求めてみよう。

 

検証開始

今回の検証ではGoogleマップの航空写真機能を利用する。

 

これで不動産広告のような俯瞰図を再現できる。さらに目当ての物件の場所に光の柱を立てるために、「Mansion Poem」というGoogle Chromeの拡張機能を利用する。

 

 

これはnabettuさんというエンジニアの方が開発して一般公開されている拡張機能で、Googleマップ上に簡単に光の柱が立てられる機能である。

まさに今回の検証に打ってつけなのであるが、さらにこのMansion Poemでは光の柱だけでなく不動産広告特有のエモい一言も挿入することができるのだ。

 

本物の不動産広告と見紛うほどの再現度で、とても有用な拡張機能である。今回はこの機能を使って、Googleマップの海外の都市に光の柱を立てていく。

また、我々に海外都市に関する知識は皆無なため、ある程度雰囲気での広告情報になることはお許しいただきたい。

 

それでは早速見てみよう。

 

リオデジャネイロ

まずはリオデジャネイロ。ブラジル最大の観光都市で、2016年のリオ五輪も記憶に新しい。

気高い山々に美しいビーチ。遠い地ではあるが、一度はこのリオデジャネイロという都市に住んでみたいものである。

 

そんなとき、まずは物件を探さなくてはならないが…

 

 

なんだか手の届きそうなにおいがする。

日本の反対に位置するリオデジャネイロも、なんだか明日電車に乗って内覧に行けそうである。週末には、公園のバザーに顔を出す感覚でサンバに参加できそうだ。

 

ブラジルのシンボルであるコルコバートのキリスト像も、

 

遠近感のせいからか、かなり身近なキリストになった。お台場海浜公園にあってもおかしくない。

良くも悪くも、大阪かその辺りにある“リオデジャネイロ村”という感じの景色になった。

 

ロンドン

続いてはイギリスの首都、ロンドンである。

ウェストミンスター宮殿やキュー王立植物園など、いくつもの世界遺産を構える歴史的な大都市だ

 

そんな街に住むなんて夢のまた夢…そもそも物件を探すところからであるが…

 

 

通勤・通学も心配なさそうだ。

交通量が激しく喧騒に包まれた物件だが、働き盛りの単身一人暮らしにはありかもしれない。ビッグベンの鐘の音で朝の目覚めも良さそうだ。

 

マンション名も「川」が2つ入っているという気合の入りよう。人気物件間違いなしだ。

 

全邸ビッグベン向きという良いのか悪いのか分からないアピールポイントも英国ならでは。

「南向き」くらいのテンションで言われると、思わず財布の紐が緩んでしまうこと請け合いだ。

 

ニューヨーク

住んでみたい海外の都市といえば、やはり N.Y. を忘れてはならない。

憧れのNew York City……そうは言ってもまずは Bukken を探して、Naiken をしなくてはならないが…

 

 

最高の Bukken を Hakken だ。

眠らない街・ニューヨークで朝目を覚ます夢の生活も、不動産広告のフォーマットに表してしまえば現実味を帯びてくる。

このありえないくらい庶民臭いマンション名も、親近感に一役買っているって寸法だ。

 

マドリード

一方スペインはマドリードに目を向けると、そこは伝統と歴史の重みを感じさせるおとぎ話のような世界観。

しかし伝統的街並みに思いを馳せるより先に…物件情報が必要だが…

 

 

地方移住の感覚で飛び込めそうだ。

憧れの地中海が見える生活である。駅近なので、潮風の影響が心配される車も持つ必要もなさそうだ。

ナメくさったマンション名も、我々日本の小市民でも手が届くような存在に感じられる大事なファクターだ。

 

「都営スペイン線」という路線もなかなかに親しみやすくて良い。

およそ「線路にオイスターが落ちていた」などの小さな理由で、しょっちゅう遅延をするのだろう。

 

モンゴル

一方で都心の喧騒から離れて、モンゴルの遊牧民のように穏やかな緑に囲まれた生活を望む方もいるだろう。

そんなとき…物件はどうすれば良いのか…

 

 

ゲルにさす、一筋の光。

結婚して実家を出る予定の遊牧民に本当に需要がありそうな広告だ。

今後移動の度に自分たちで組み立てる必要はあるが、最初だけ業者に頼むのも選択肢の一つである。

 

こういった交通情報は非常に有益である。リャマやアルパカがここにいるかは分からないが、このように提示されるだけで長閑なスローライフが想起される。

ちなみにリャマの方が少しだけ、早いらしい。

 

マチュピチュ

世界遺産ですら身近な存在に。

タワマンの広告では絶景を売り言葉にする物件も多いが、比にならないほどの絶景を提供してくれる

ただ噂が広まる早さはいかんせん凄そうなので、ご近所づきあいも大事にしなくてはならない。

 

世界遺産のマチュ・ピチュを切り開いてイオンモール的なものをおっ立てようという商売根性も素晴らしい。

世はリモートワークの時代。都心に疲れた若年層が空中都市へとやってくるアクロバットなJターン就職も夢物語ではないというワケだ。

 

エジプト

いわばエジプト版タワーマンションである。

湿度も低く住みやすそうだ。スフィンクスへのアクセスも良く、人気が高そうな物件である。

 

築年数は4700年ほどであるが、文化財としての重要性からリノベーションもされている。建物が建物だけに、多くの隠し部屋が存在しそうだ。

鍵を渡されたら、まずは新たな間取りを開拓してみたい。

 

アフリカ

サバンナですら、住まいの雰囲気に。

建造物も道路も一切ない地域ですら、光の柱を立てるだけで住めそうな気配を醸し出せるのだ。

着工予定はじめ各種見積もりもおそらくはまったくの未定。野生動物たちの生態について、目下調査中の構えである。

 

総括

いかがだっただろうか。

数カ国の都市に光の柱を立ててみたが、概ね身近に感じられ、自分も住めそうな気持ちになったと思われる。

 

この日本において、お金や時間の関係で行きたくても海外に足を運べない人への代替手段は多く用意されている。

例えば「食」の側面では、世界各国の料理を提供するレストランが国内には多く存在し、異国のグルメを簡単に味わうことができる。「衣」の側面においては、オンラインショッピングを通じて世界各国の様々な服飾衣装が手に入る時代だ。

 

そして「住」の面ではこの光の柱だ。あなたの意中の海外都市に、この光の柱を立てるだけで、そんなに住むのも難しい話ではなくなる気がしてこないだろうか。

次の瞬間、きっとあなたは住んでもいないその場所の最寄駅やスーパーまでの距離を気にし始めるだろう。

 

あなたの心はすでに、その街にあるも同然だ。