神出鬼没な存在かつ鮮やかな手口で犯行に及ぶ泥棒を、普通の泥棒と区別する意味でも「怪盗」と呼ぶことがある。
刑法第235条の窃盗罪に該当するという点でただの犯罪者に変わりないのだが、怪盗というのはどこかカッコいいものである。
その多くがシルクハットにマントという風体で、盗みの技術も現実離れしており、フィクションの世界の存在だ。
そして彼らは盗むスキルに長けすぎているあまり、窃盗を事前に宣言する「犯行予告」や、窃盗が完了したしるしを現場に残す「犯行報告」をおこなう。
事前事後報告を欠かさないという点では有能な社会人のスキルを併せ持つ怪盗。
この犯行報告を見た刑事がくそー!怪盗め!となるまでがお決まりである。
厳重な警備下にある絵画も、宝石も、怪盗からすれば朝飯前だ。
怪盗はどんなものでも盗んでみせ、この憎たらしいメッセージを残して闇夜に消えていくのであるが..
この怪盗からのメッセージがあれば、何もない場所でもさっきまで何かあった感じになるのだろうか。
例えば空の丼に「月が闇から顔を出す夜に、このカツ丼は頂いた。by 怪盗」などと書かれたカードが置いてあった場合、
この丼にさっきまでカツ丼が盛られていた!となるのだろうか。
本来無かったものが、実はあったような気になれるのは、見栄を張る上で素晴らしいメソッドだ。
ということで今回は怪盗からの犯行完了のメッセージを置けば、元々そこに何かがあった気分になれるのかどうかを検証する運びとなった。
例えばデートの際に女性に見栄を張りたいケースにて、この怪盗からのメッセージを利用してさっきまでそこにあった感を出してみよう。
検証開始
女性とデートでランチに行ったとき「ここは俺が」などとほざき、スマートに支払いをしてみたいものである。
しかし、現実は非情である。
金欠の場合もあるだろうし、単純に自分が払う感じに持っていきたくないなという素直なキモチのときもあるだろう。
と、そんなとき、
え!?怪盗が!!?
くそー!怪盗の野郎め!!
…というわけでooちゃんゴメン!ちょっと怪盗にやられたみたいで…。ここお願いしていい…?
といった具合である。
空の財布でも怪盗からの置き手紙を挟み込むだけで、元々はちゃんと用意があった感を演出できるのである。
冷蔵庫の中が寂しいときに
女性を家に誘ったなら、つまみの一品でも振舞ってあげたいもの。
しかし料理というのは常日頃からしていないと、そう上手いこと冷蔵庫は呼応してくれないのだ。
しかし、そんなときも。
くそー!怪盗の野郎め!!
いやぁ、普段は、料理とかめっちゃしてるんだけどね。怪盗だったらしょうがないね。Uberしよっか。
と、普段は料理系男子である感を演出できるのである。
そして冷蔵庫に入ってた怪盗からのカードは、
冷蔵庫に貼るマグネットとして再利用することも可能だ。
これで郵便ポストに入ってる意味分からないマグネットとともに大活躍だ。ここにゴミの分別表を貼っておこう。
トイレットペーパーが切れてた場合に
忘れた頃に切れてしまうのが電球とトイレットペーパーだ。
特に女性を家に招いた日に切れるなど言語道断。ちょっとトイレットペーパー買ってくるね、なんて台詞を吐いちゃ興ざめだ。
しかし、そんなときも。
くそー!怪盗の野郎め!!
…というわけで、くそだけにクソ拭く紙が切れちゃってた!ooちゃん!薬局にゴ●買うついでに便所紙買いに行こう!
というように、あくまで怪盗のせいにして、女性の気分を害することなくスマートに買い出しに出かけられるのだ。
たまたま今日怪盗が来ただけで、本来はトイレットペーパーとか切らさない生活力のある人なんだなという好印象も与えられる。
また最悪の場合にはそのカードで拭くというワイルドカードも切ることができるので、心の余裕にもつながるのである。
クローゼットの中が寂しい場合に
女性の服をかけておくとき、もしかしたらクローゼットの中身を見られるかもしれない。
クローゼットはお洒落のバロメータ。一目見るだけで、どのような美的センスの持ち主なのか晒されてしまう。
しかし当然ながら、普段から取り揃えて置いているようなお洒落な服などない。
お母さんと子供の頃アウトレットで買い物したダウンジャケットを、今だに一軍で使っている我々には苦しいシーンだ。
しかし、そんなときも。
くそー!怪盗の野郎め!!
…服も全部取られちゃったみたいだー!表参道とかで買っためっちゃ良い服いっぱい持ってたのにー!!
と言えるわけである。
怪盗に服を狙われるなんて一体どんなブランドものを!?と、女性の期待感を上げることにも寄与するはずだ。
駐車場にて
家の中のものは概ね怪盗に盗られたため、有意義な時間が過ごせるはずもない。
せっかく買ったゴ●の封を切ることもなく、女性が帰ってしまうこともあるだろう。そんな時にも、最後の最後まで格好をつけてみよう。
「さて、じゃあ帰りは車で送っていこうか。」
「えっ、車運転できるんだ…!(トクン!」
帰宅する際、たとえ車を持っていなくても見栄を張りたいとき、
「あれ、ここにあるはずなんだけど…」
「くそー!怪盗の野郎め!!」
「レッカー移動されたの?」
というように、本来は車を持っていたのにというポテンシャルを見せつけることができるのだ。
車を持っていない男よりも、車を持っていたけど怪盗に盗られた男の方がイケてるのは明白である。
普段の生活でも
怪盗からのメッセージはときに晩ご飯に活用することもできる。
例えばこんな変哲もない寿司パックがあったとしよう。
30%OFFだから購入したものの、もう少しネタを豪華にしたい…
そんなときは、マグロの赤身をちょっとのけて…
本当はここは大トロだったのか!!
というように、実はマグロの赤身だったその寿司スペースに本来は大トロが存在していたことになる。
本当はちょっと高めの寿司パックを買っていた気持ちになれるのだ。
怪盗のカードはときにこんなメッセージも残すだろう。
エビがしょぼく見えてしまうので、今回は少し相性が悪いかもしれない。
会社のプレゼン資料がないときに
明日の朝までに作らないといけない会社のプレゼン資料が一向に完成しないことは良くあることだ。
そんなときも怪盗からのメッセージを活用する奥の手が存在する。
できないことはできないで、仕方がない。全ては怪盗のせいにしてしまえば良いのだ。
いやぁ、本当は準備してたんですけどね。
全部持っていかれちゃいました。これで終了します。
怪盗も目をつけるほどの目覚ましい資料があったのだろうと上司たちも舌を巻くことだろう。
情報流出的な別の案件として議論されるかもしれないが、ひとまずプレゼン自体は乗り切れること間違いなしだ。
総括
いかがだっただろうか。
怪盗からのメッセージがあることで、何もない空間に本来は何かがあったという気持ちになることができる。
彼らからのメッセージは、ときに我々の心の空白を埋めてくれるのだ。
最初から持っていなかったものに対しても取り返すぞ!というモチベーションが湧く。これは素敵なことではないだろうか。
自信がなくて目を逸らしてる夢や願望があるならば、今一度それらを見つめ直してみて欲しい。
それはきっと弱気な自分という怪盗ミラクルに盗まれたのだ。さぁ、取り返しに行こうぜ。
完