コーラにメントスを入れてみた!!




 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 14:30  新宿御苑

雨上がりの街は、冬の冷たい空気を一層凍てつかせて、僕のほほをぴりぴりと撫でる。でも、立ちのぼるこのアスファルトの匂いは、昔からあまり嫌いじゃない。

 

 

かつての恋人からの、突然の連絡。

独り身で暇を持て余していた僕は、逸る気持ちを抑えながら極めて冷静な返信を送った。

 

 

自分でも恥ずかしいくらいに、鼓動が高まっているのが分かる。

ああ、自分は期待しているんだ。頭で理解するより先に、心臓の息遣いがそれを教えてくれた。

 

 

薄気味悪いほどに上がってしまう口角を精一杯正して、僕は待ち合わせ場所の公園に向かう。

 

 

かつてもよく集合場所に使っていた公園に

かつてとそう変わらない姿で、彼女はいた。

 

「よぉ、久しぶり。」

 

「久しぶり。来てくれるとは思わなかった。」

 

「ちょうど暇しててね。あれ、まだこの辺り住んでるんだっけ?」

 

いきなりヨリを戻そうなんて彼女も言いづらいだろう。ここは自然な流れで会話を盛り上げて、どこかお店に誘ってしまおう。そしてそのまま、なんとなく一緒に夜までいられれば。

 

「へー引っ越すんだ。良いなあ俺も考えててさ。」

 

またもう一度。なんとなく君と、一緒にいられるんだ。

 

「会社変わってたんだ。結構大変だったね。」

 

「そうだ。ここじゃ寒いからさ、どこか入らない?」

 

「ありがとう。ううん、いいの。ここで。」

 

「えっ……あっ、そう?」

「あのね、純平くん」

 

「わたし、結婚するの。」

 

「……そうなんだ。」

 

「よかったじゃん。いい人が見つかって。」

 

違う。

 

「ってかお祝いしなきゃじゃん。学科のやつら誘ってさ。」

 

違うんだ。そうじゃない。

 

「LINEグループまだ残ってるかな。久々に動かしてみようぜ。」

 

そんなことが言いたいんじゃない。

 

「……うん。ありがとうね。それだけ伝えたくて。」

 

「……うん。ってかさ……」

 

「何で俺じゃダメだったんだっけ。」

 

「……」

 

「……なんとなく、ずっとなんとなく、一緒にいちゃいそうだったから。」

 

「わたし、もう行くね。」

 

 

なんとなく、ね。

 

 

 

 

幾ばくかの時間が過ぎただろうか。公園内の子供の声や、行き交う車の音が耳に入るようになってきた。

 

 

足取りは自然と、二人でよく遊んでいた新宿御苑に向かっていた。

 

 

本当に、ここに来ていいのだろうか。

 

 

草木に囲まれて澄んだ空気が、心が空っぽな僕を嫌に情緒的にさせる。

 

 

なんとなく、二人でいられれば良いと思ってた。

 

 

そのなんとなくが、彼女を苦しめていた。

 

 

小さな彼女の手を、自分なりに引っ張っていたつもりだったけれど。

 

 

 

「純平くんはさ、この先私とどうなりたいの?」

 

「変わんないよ。ずーっと一緒にいるだけ。」

 

「ずっと一緒に?」

 

「うん。ずっと一緒に。はるみもそう思うでしょ。」

 

「うん。そうだね。」

 

 

 

 

 

 

 

END