住宅メーカーである「積水ハウス」のCMを見たことがある人は多いと思う。
このCMには独特のエモさがあり、作業をしていてもそれを止めて見入ってしまったり、思わず感傷に浸る人もいるかもしれない。
積水ハウスのCMの特徴は他の住宅メーカーのそれとは少し違い、住宅そのものの設計やクオリティではなく、
その家に住んでいる人間のストーリーに焦点を当てているところである。
過去には女優の剛力彩芽が出演し、幼馴染の男の子が大学受験で遠くへ行ってしまうという物語だけで、CMを6話も展開したこともあった。
言わばこのCMは家族、恋愛、ペットとの絆などをテーマとした一つの短編ドラマであり、最後に“ついで”で家の紹介をしていると言っても過言ではない具合なのだ。
そんな積水ハウスのCMに使われている「積水ハウスの歌」も、実は1970年に誕生したものであり、約50年間使用されている歴史の長い曲である。
ただ、この曲の中で“積水ハウス”というワードが出てくるのはサビの一番最後の部分のみであり、
CMも前述の通り「住宅自体にフォーカスしたCM」ではないので、人によっては最後の最後に「いやこれ積水ハウスのCMかい!」と気づくこともある。さらに言えば、最後に「それそのもの」の名前を言うので、基本的に気づかずに終わることもない。
では、曲の最初から最後までの間で「これ積水ハウスのCMだ!」と一番人々が気づく瞬間はどこなのだろうか。
そんな疑問を解消するために、今回は120人の人に積水ハウスのCMの音声を聞いてもらい、どこで気づくのかその平均値をあぶり出すことにした。
調査方法
今回はこちらの積水ハウスのCMの音源を使用する。
https://www.youtube.com/watch?v=ArqCBEFW800&t=2s
この曲の開始から、サビ最後の「積水ハウス」というワードの部分までの35秒間を切り取り、
タイトルと映像を伏せて聴いてもらい、その人が何秒で「積水ハウスのやつだ」と分かったのかを記録していく。
調査対象は10代から50代までの広範囲の年齢層を定め、世代別のデータを取得。
その記録はエクセルにまとめ、都度中央値と平均値が割り出せるようにしておく。
120人に聞き終わった時点で、その平均タイムを今回の調査結果とする。
調査開始
20人ほどのデータが集まった時点での最高タイムは8秒。
曲のイントロ部分が終わり歌詞に入った瞬間の秒数であるが、どうやら“住んでいる”人らしい。
「住んでるので…」というバックグラウンドの披露の仕方も格好いい。積水ハウス調査で高得点を叩き出したとき、一度は言ってみたいセリフだろう。
ここでさらなる高得点を期待し、当該の「積水ハウス」を中心としたハウスメーカーに勤めている人々にも調査をおこなった。
「積水ハウス勤務、24歳女性」
なんと彼女は営業成績全国1位らしい。7秒はこの時点での最高記録である。
「積水ハウス勤務、24歳女性」
「いい曲でしょ」はもう作曲者側に立っている。素晴らしい当事者意識だ。やはり積水ハウス自体に勤めている人間は、好タイムをマークする傾向にある。
「ハウスメーカー勤務、25歳女性」
とはいえ積水ハウス以外に勤める競合ハウスメーカー社員も負けてはいない。こちらも良いタイムだ。ハウスメーカー業界自体が、このCMに敏感なのだろう。
また、近い将来この業界を背負って立つ「内定者」たちにも聞いてみた。
「ハウスメーカー内定者、23歳男性」
結果とコメントが合っていない気もするが。彼の中では早いタイムなのだろうか。意識は立派なので、これから社会の荒波に揉まれて大きくなって欲しい。
「ハウスメーカー内定者、22歳女性」
論外である。勝手な印象だが、1,2年ですぐに結婚して退職しそうだ。
積水ハウス早わかりランキングベスト3
集計結果の前に、特筆すべき結果を残した3名を、ランキング形式で紹介したい。
積水ハウスCMの世界にも上位一握りの人間だけが見える光景がある。この才能たちの片鱗に、少しだけ触れてみようではないか。
第2位: 3秒(同率)
大学生 男性 サッカー部所属 20歳
彼の通う大学のサッカー部員は基本寮生活を余儀なくされるのだが、寮の人間関係がうまくいかなかったり、物を盗まれたりしたため、現在サッカー部で唯一自宅から通っているとのこと。
3秒と言う記録的な数値をマークできた理由は「この曲をiTunesのプレイリストに入れているから」だそうだ。部で唯一自宅から通う男は、自宅についての曲をめちゃめちゃ聴いていた。
第2位: 3秒(同率)
大学生 女性 20歳
こちらの方は大学でメンタルトレーニングを研究している美人の女性であるが、それ以上の情報は全く得られなかった。でも美人が3秒で積水ハウスと即答した、その事実だけで十分ではないか。
第1位: 1秒(世界記録)
会社員 女性 積水ハウス勤務 24歳
堂々の1位をマークしたのはやはり積水ハウス自体に勤める社員の方であった。
1秒という規格外のタイムを達成したにも関わらず、「みんなもわかる」と謙虚な姿勢を貫いている。トップアスリートとは、常に驕らず、自らに妥協しないものなのだ。そして積水ハウス社員にはこのレベルの化物がゴロゴロいるという事実も、また恐ろしい。
ちなみにこの方は積水ハウスでは一般職で事務をやっているらしい。
集計結果
最終的な集計結果は以下のようになった。
平均値と中央値にズレはない。大きな外れ値もないようだ。
16.7秒といえば「こころはその胸は、何を思うだろう」の一節の途中である。この瞬間に、我々は積水ハウスを思うのである。
果たしてそうだろうか?
ここで一度当初の議題に立ち返りたい。我々は「一番“積水ハウスのCMだ”と気づかれる瞬間」を見つけたいのだ。それは平均値でも中央値でもない。
最頻値ではないか。
※最頻値 … 度数のもっとも多い階級に対する値。今回のような調査の場合、出現頻度のもっとも多い数値を指す。
分布具合はグラフにすれば一目瞭然だ。以下のように可視化する。
平均値の16秒周辺が非常に少ない。
危うく本質的な究明に失敗するところだった。仕切り直そう。我々は16.7秒で積水ハウスを思うのではない。
歌詞が始まる8秒付近で、積水ハウス上級者が理解をし、サビが始まる20秒付近で、積水ハウス中級者が理解をするのだ。そして、
最頻値: 8秒
これこそが今回得たかった「一番“積水ハウスのCMだ”と気づかれる瞬間」と言えるだろう。
二極化の進んだ世界では、平均を見ていては本質にたどり着けない。今回の議題は、格差社会などの問題に対しても示唆的である。
この結果を受けて、君のこころはその胸は、なにを思うだろう
富めるものも、病めるものも
このまちにある
きみの住んでる
積水ハウス
完
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マジスカスクエアガーデンでは、他にも社会通念的な疑問を日々調査し、サマリーとして記事をまとめています。こちらの記事もぜひチェックしてみてください。