運命の出会いといえばよく「本屋で同じ本を取ろうとして手が当たった」というシーンが、ベタな例として挙げられる。
あまりにもベタな例すぎて「これってベタだよね」と言うことすらベタになりつつあるものだが、残念ながらこの出会いが実際に起こる可能性はほとんどなく、せいぜい映画やドラマだけの話である。
2017年に恋愛応援コミュニティサイト『ワクワク』というメディアによって行われた調査によると、本屋で手が当たる出会いが起きる確率は「0.0000147523%」らしい。
これは年末ジャンボで1等が当たる確率や、人がノーベル賞を取る確率と同程度である。ノーベル賞って確率で獲るものなのだろうか。
とにかく、ソーシャルディスタンスが標語化されたこの時代で、ますます現実から遠ざかる出来事だ。
しかしこの運命の出会い、一度はしてみたいもの。
我々は、この0.0000147523%という確率を突破して、明日にでも運命の出会いを果たす方法を編み出した。
本日はそのメソッドをご紹介したい。
ご時世を考慮して外出の必要もない。運命に恋するティーンなアナタも、運命なんて忘れたシニアなアナタも、その他有象無象なアナタも。
この記事を読んで、
レッツ☆運命の出会い!
いつでも運命の出会いができる本
まずは家にある本を適当に一冊用意する。
今回は株式投資の本でやってみよう。知的なキャリアウーマンと出会える気分になれそうだ。
そしてその本の真ん中あたりを開こう。300ページの本ならば150ページになるだろう。
あとはこの背表紙に対して鏡を差し込んでいく。
これで「いつでも運命の出会いができる本」の完成だ。
それでは早速これを使って、運命の出会いをおこなっていく。
自宅にて運命の出会い
自粛期間の昨今、家で読書に耽ることも多いだろう。
運命なんてものは、意外とそんな雑多な日常の中に転がっているものだ。
「さて、今日はどの本を読むかな」
「今日はちょっと、将来の資産形成について勉強するのもありだな」
「あったあった、これだ。よいしょっと…」
その時はいつも、突然に。
「あっ…///」
「す、すみません…!」
「部屋の中なのに…これはドキつく(ドキドキするの意)って〜☆」
ちなみにこの運命の出会いの良いところは、
何度でもできることだ。
「…誰か分からなかったけど、とりあえず、あの本が取られる様子はなさそうだし。」
「改めて、読みますねこれを…」
「あっ…///」
「1日に2度も…!本当にこんなこと、あるんだっ>< 」
そして運命の出会いは、意識していないときにやってくるからこそときめくのである。
今回の方法では、いかなる精神状態でも運命からは逃れられない。
「ダメだ、こんなすぐ運命の出会いしちゃうなんて><;俺に雑念があるからだ。集中集中…」
「集中……」
「ほいっ!と」
「あっ…///」
膝の下から無心で手を伸ばしたが、しっかりと運命が映り込んでくる。
向こうも同じ動きをしているのかも。そう考えると、すごく運命的に思えて来ませんか?
そしてこの運命の出会いはなんと、本を取る瞬間以外でも発動できるのだ。何気ない日常が運命の出会いで溢れたら、それはとても素敵なことだと思う。
早速その検証をご覧いただきたい。
食事中でも
男の一人暮らし、たまには奮発をしてピザを頼んでしまうこともあるだろう。
ワクワクしながらオーダーするも終盤には飽きが来て、誰かもう一人いれば・・・なんて思いで孤独に苛まれた経験はないだろうか。
つまり宅配ピザを食べる際に運命の出会いができれば、孤独感も解消されて一石二鳥なのである。
「うひょ〜〜うまそーー!!」
「まずはこの右側のやつからだな。サラミが一番乗ってるし。」
「あっ…///」
「んをッ!また運命の出会い、果たしちゃった・・」
「向こうも、サラミ多いやつ欲しかったんだ」
サラミも美味しいネ☆
運命の出会いはトイレでも…
トイレとは基本的に孤独な空間である。
自らの排泄物との別れの場所で、逆に出会いが起こるなんて、とってもロマンチックじゃない?
「んふ〜っ・・・」
「さて、そろそろ出るか。」
「よいしょっと」
「あっ…///」
「やだ〜っ!まだ手も洗ってないのにィ!」
これで便所に入るたびにドキドキできること間違いなしだ。この日のウォシュレットは一層感じ方が違ったと、のちにごどうは語る。
運動中でもその時は突然に
スポーツの最中に出会いがあっても素敵だろう。
運動で上がった心拍数が、恋のドキドキと合わさって相乗効果。吊り橋効果ってやつだ。
例えばそれは
リレーの練習のときに。
「はぁはぁ…」
「ごどうさん!!」
「よっし来い!」
「あっ…///」
「やだっ!」
カランッ!カンカン…コロコロ……
「あれ…何の変哲もない普通のバトンだ……」
「何してんすか…」
「なんでだろう…すごく今、ドキドキしてる。」
「少女みたいな声出てましたけど。大丈夫ですか。」
大丈夫じゃないはずだ。いつもより上気したごどうの頬は、練習のせいだけではないだろう。
恋のバトンは確かにアンカーの彼に手渡された。このままゴールインできるかどうか、それは彼次第なのである。
殺人現場でも
事件現場の捜査中に出会いがあっても素敵だろう。
殺害現場の緊張感の中で上がった心拍数が、恋のドキドキと合わさって相乗効果。吊り橋効果ってやつだ。
ガイシャは20代男性。身元は以前調査中。
非常に凄惨な殺人現場だ。流血も歌舞伎レベルである。
「現場はここか…」
「警部!お疲れ様です!」
「おう。ホトケさんは?」
「はい!こちらです!」
「こいつはひでえな・・・」
「遺体の身元は目下捜査中です!死亡推定時刻は本日の14時頃。第一発見者は近所に住む40代の主婦でして・・」
「別の場所で殺害されてからここに遺棄された可能性が高く、現在そちらのセンで捜査を・・・」
「おい若えの。」
「・・はい!」
「ホトケさん眼開いてんじゃねえか。」
「閉じさせてやりな。こういうときは、そうするもんだ。」
「はっ・・・!大変失礼しました!!」
「ホトケさんには非礼があっちゃならねえ。」
「あっ…///」
「えっ・・・まさかこんなところで出会いが・・・!?」
「け、警部?ホトケさん、眼閉じてないですが」
「あ、ああ、そうだったすまない。」
「気を取り直して、若えの。ホトケさんには礼を欠いちゃあ・・」
「欠いちゃあっ…///」
「・・・ダメだ今日はもう捜査できねえ;ドキドキが止まらねえよ〜っ///」
「けっ、警部ゥ〜〜!!!」
といった具合である。
今回発生した恋の事件を迷宮入りさせてしまうか、ホシを挙げられるかは彼次第。運命の出会いってヤツは、どんな事件よりもミステリーってワケなのである。
総括
いかがだっただろうか。
最後に今回ドキドキを堪能した桐生に、感想を語ってもらおう。
「正直、バカなことをやっている自覚はある。」
「ただ、自粛ムードが蔓延るこのご時世に、一人でいても誰かとの出会いを感じられる取り組みは、有意義だと感じた。」
「君の隣にも、寄り添う人がいる。今はいなくても、未来に寄り添うであろう人がこの世界にはいる。」
「運命ってのは大それたもんじゃなくて、人は人と一緒に生きるものだという。ただそれだけの話なのかもしれないな。」
「あっ…///」
「・・・!?」
「俺も同感だ。この世に生を受けたこと、同じく生を受けた人々と交流すること、これだけでもう十分に運命的なんだ。恋人の有無は関係ない。今身近にいる人の大切さを、改めて見つめ直すだけでいいんだ。例えば、俺の隣には今お前がいる。それは、それだけで運命的なんだ。そうだろ?」
「お前は気持ちわりいから隣に来んな!!!」
「ヒィ〜ッ!!!!」
完