偶然俳句対決〜ジャンプ漫画のキャラクター編〜




2nd ラウンド

司会
続いては第2ラウンドです!

このラウンドでは、全巻のセリフより一番俳句として秀でてそうなものをピックアップしました。各作品における、渾身の一句になります。

島崎さん
しっかりと評価させていただきました。

司会
ありがとうございます。偶然俳句王に輝く作品はどれなのか。注目の第2ラウンド、スタートです!

島崎さん
ではまずは、3位から。

 

 

第3位 ドラゴンボール

詠み人:  フリーザ

 

司会
ナメック星でフリーザがベジータやクリリンらにブチギれた時のセリフですね。

緊迫感のあるシーンで突如詠まれた一句です。オーラを感じます。

島崎さん
これは綺麗に「5・7・5」になっていて、セリフ自体も面白いですね。

ただ一点だけ勿体無いのが、

 

島崎さん
この「じわじわと」がいらないかもしれないですね。

司会
ほう。というと…?

 

島崎さん
次の「なぶり殺し」と言う言葉にすでに「じわじわと」という意味が含まれているので、重複しちゃってるんですよね。

司会
じわじわ殺すか、なぶり殺すだけで良かったんですね。

 

島崎さん
そうですね。17音しかないので、勿体ないです。

司会
ブチギれてるので、17音の使い方まで少し意識が回らなかったようですね。

なぶり殺しにします。

だけで良いってことですもんね。

島崎さん
そうなってきますね笑

続いては、第2位です。

 

 

第2位 鬼滅の刃

詠み人:  妓夫太郎

(けっきじゅつ えんざんせんかい とびちがま)

 

司会
鬼滅の持ち味が存分に出た一句ですね。妓夫太郎という鬼の技名になります。

一方で俳句としての評価は分かれる一作かと思いましたが…

島崎さん
いやぁ、こういうの結構好きですね僕は

司会
島崎さん、飛び血鎌結構好きなんですね。

島崎さん
読んだ瞬間に「技の名前だ!」って情景がすぐに浮かぶのがいいんですよね。

まぁこれは直すとか直さないとかじゃないかもしれないんですけど、

 

島崎さん
唯一やっぱり中八になってるのが惜しいですね。「えんざんせんかい」ですから。

司会
そうですよねえ。中七で行けなかったんですかね、妓夫太郎。

島崎さん
今後調整して欲しいですねえ。

 

島崎さん
まぁでもこの「血鬼術!」ってのもかっこいいですよね。

漢字が並んでるっていうのも面白いと思います。

司会
漢字が羅列されてる俳句は珍しいものなんですか?

島崎さん
珍しいと思います。でもやっぱりこの句は聞いた瞬間に「あ!バトルシーンだ」って想像できるのが、一番の評価ポイントですね。

司会
想像できるって、本当に重要なんですね。

 

島崎さん
まぁでも、「血」が被っちゃってるのが、

ちょっとダルいかな。

司会
妓夫太郎も初めてでしょうね、技名がダルいって言われるの。

 

 

 

司会
それではいよいよですね、第1位の発表をお願いします!

島崎さん
はい。1位は、こちらです。

 

 

第1位 こち亀

詠み人:  両津勘吉

 

司会
おお〜〜!こち亀強し!ですね。

両さんが屋形船でタヒチに向かってる際に食料が尽きて、軍艦からパクった缶詰だけで数日生き延びている状況を嘆いた一言ですね。

島崎さん
これがもうめちゃめちゃ良いですね。

 

島崎さん
まぁ今回も中八なので「で」が要らないんじゃないかとは思うんですけど、

 

島崎さん
この「軍隊」と「缶詰」が僕はすごく面白いと思いました。

司会
ほほう。

 

島崎さん
俳句で句の中に使われてる2つ以上の言葉に対して「近い」って言うことがあるんですけど、

 

島崎さん
例えば「流れ星」って言葉と「願い」って言葉が出てくるとこれは「近い」んですよね。

意外性がなさすぎるというか。あと「神社」と「願い」とかも。双方から簡単に片方の言葉が想像できちゃうんですよね

司会
なるほど。

 

島崎さん
その点「軍隊」と「缶詰」は近くはないんですよ。

普通家で缶詰見て「あ、軍隊だ」とはならないじゃないですか。

司会
確かにならないですね。フルーツかツナ缶なので。

 

島崎さん
でも言われてみれば「確かに軍隊って缶詰食ってるよな!」ってなるのが良いんです。

軍隊→缶詰 は想像できちゃうとは思うんですけど、缶詰→軍隊はなかなか考えられない。

双方に矢印が向いてないのが良いんです。

 

島崎さん
まぁ言うなればこの「もう」って言うのが微妙ではあるんですけど、

 

島崎さん
でもやっぱりここですよね。軍隊の缶詰…、

食うものはあるんだけど、食うものに困ってるっていう状況もまた面白い。

司会
軍隊の缶詰にめちゃめちゃハマってますね。

ちなみに「軍隊」って夏の季語だったりしないんですか?

島崎さん
違いますね。軍隊の方たちは年中活動されているので。

司会
そうですよね。軍隊のみなさん失礼しました。

 

島崎さん
さらに言うと、仮に「缶詰」だけだと広すぎるんですよ、範囲が。

「軍隊の」ってつくともう最高なんですよね。

司会
もうずっと同じところ評価してますね。

島崎さん
ぶっちゃけ、「軍隊の缶詰」って表現、

これ他でも使えますね。

司会
軍隊の缶詰に対する評価になってません?

 

島崎さん
というわけで、これが1位ですね。

司会
はい、ありがとうございました。

 

 

4位・5位の紹介

2stラウンドに関しては、4位と5位の句に対する達人の寸評はダイジェストで発表する。

 

第4位  ONE PIECE

詠み人:  ニコ・ロビン

 

司会
フランキーが仲間との別れで流した涙を技のせいにしようとしており、それを見たロビンの一言です

良い女の一句って感じですね。

 

・倒置法を使っているのは結構評価ポイント。

・中8になっている。倒置法を使うならなおさら中8は勿体無い。

・「涙」と「痛み」の表現が近い。涙を出す理由として「痛み」は1位。

・上五以外の部分が全て涙の理由の説明になっている。勿体無い。

・上五の「ずるい」という表現は直接言うのではなく、他の言い方で表現した方がいい。

 

司会
出ました「近い」の概念!ここ、偶然俳句で陥りがちなポイントですね。

 

第5位 NARUTO

詠み人:  うずまきナルト

 

司会
意識を失っているサスケの前で、サスケを倒した敵に向かって放った一言です。

読んでる最中は胸に来る一言だったので選出しましたが、俳句として抜き出すとなんか急に安っぽくなっちゃいますね。

 

・中8になっている。

・「あいつにも」と「サスケにも」が重複している。どちらかでいい。

・「あいつ」を指すものがサスケ、もしくは第三者の可能性もある。考えてしまう。

・目標という意味での「夢」を使うのはかなり危険。感動の押し売りみたいになるので控えた方がいい。

・「あったんだ」という表現が曖昧。

・夢を持つのは当たり前。わざわざ「あったんだ」と言う必要はない。

・全体的に「あー、俳句の形になってるねー」というだけの印象。

 

司会
正岡子規と比べてあげないでください。

 

 

寸評を終えて…

司会
という訳で結果が出揃いました!

第一回、偶然俳句対決〜ジャンプ漫画のキャラクター編〜、栄えある第1位は……

島崎さん
……!

司会
こちら葛飾区亀有公園前派出所、です!!

島崎さん
お〜!おめでとうございます!!

 

 

司会
2位に鬼滅がつけているのも、最近らしくて良いですね。

島崎さん
これからも頑張って欲しいです。

 

 

島崎さん
いやぁ、しかしこち亀が強かったですね。

司会
1stと2ndどちらも1位でしたね。

こち亀は卑近な日常に根ざした話が多い分、そこを面白く見せるために、情景描写や表現が研ぎ澄まされているのかもしれません。

島崎さん
他にも良いのがありそうですよね。

 

 

島崎さん
普段なかなか触れることのない句もあって、楽しかったです。

司会
それは良かった!改めまして本日はご協力いただき、誠にありがとうございました!

島崎さん
ありがとうございました〜!

 

 

総括

いかがだっただろうか。

漫画のセリフも俳句の視点で捉えると、カッコイイ決め台詞にもどこか漏れがあったり、何気ないセリフが光り輝いて見えたりするものだ。

 

それはあなたの大好きなキャラクターの、違う一面を知れるきっかけになるかもしれない。そう考えると、なんだかワクワクしてくるだろう。

 

例えば今、頭の中で好きな漫画の、好きなキャラクターの、好きなセリフを思い浮かべてみてほしい。

 

そのセリフ、

 

 

中八になってはないだろうか?

 

 

1文字、削らないとね。